演目/あくび指南
古典落語の滑稽噺で、「芸の指南もの」(何かの芸を習いに行くが、しょうもない方向に転がる噺)の代表作です。
江戸・上方どちらでも演じられますが、もともとは上方系の噺とされています。
あらすじ(基本形)
- 退屈しやすい男が「粋な芸を身につけたい」と思い、“あくびの上手なやり方”を教える師匠のところへ習いに行く。
- 師匠は、あくびにも作法があると説く。
- 顔の作り方
- 口の開け方
- 手の添え方
- 間合い
- 周囲に「眠気が伝染する」演出
- ...などをやたらと大げさに解説する。
- 弟子は一生懸命まねするが、なかなかうまくいかない。
- そのうち師匠が見本を見せようとして……師匠自身が本当に眠くなってしまう。
- 最後に弟子が一言。
代表的なサゲ
弟子「先生、今のがあくびですか?」
師匠「いや……今のは本物や」
「芸としてのあくび」と「本当に眠いあくび」が逆転するサゲ。
得意とした噺家
上方
桂枝雀
→ 表情とテンポで爆笑を作る名演。
桂米朝
→ 古典の型を整えた。
江戸
古今亭志ん朝
→ 軽妙な会話劇として演じる。
柳家小三治
→ 脱力系の味が合う。
噺の特徴
1.「芸事指南噺」の典型
同系統の噺:
- 寝床
- うなぎ屋
- 茶の湯
- かつぎ屋
“くだらない芸を真面目に教える”構造。
2.会話だけで成立する
登場人物は基本 二人
- 師匠
- 習いに来た男
そのため、間(ま)と演技がすべての噺です。
3.前座・二ツ目向き
理由:
- 短い
- 登場人物が少ない
- サゲが分かりやすい
なので寄席では比較的よく出る演目です。
噺のテーマ
表面的にはただのナンセンスですが、どうでもいい芸を大真面目に教える滑稽さが“形式化された芸事”の風刺になっています。
師匠と弟子の関係のパロディという要素もあります。
類似構造の落語
「あくび指南」と構造が似ている噺:
- 転失気
- やかん
- つる
“知らないのに知ったかぶりする人”を笑う系統です。