演目/かぼちゃ屋
「かぼちゃ屋(かぼちゃや)」とは
古典落語の滑稽噺(こっけいばなし)の代表作で、間抜け者・商売噺の一つです。
何をやらせても要領の悪い男が、かぼちゃ売りを任されるものの、商売のやり方を理解しないまま珍騒動を巻き起こします。
上方落語を代表する演目の一つで、東京でも演じられています。
あらすじ(全体)
何をやっても長続きしない間抜けな男がいる。
見かねた旦那(または主人)が、「難しいことは考えなくていい。かぼちゃを売ってこい」と、かぼちゃを荷車や天秤棒に積んで売りに出す。
男は商売の経験がないため、「かぼちゃー、かぼちゃー」と大声で売り歩く。
しかし、客との値段交渉や受け答えがまるでできない。
値切られると、「じゃあ、いくらでもいいです」と言ってしまったり、
代金よりもお釣りを多く渡してしまったり、
商売にならない。
それでも本人は一生懸命。
周囲の人々は呆れながらも、そのあまりの間抜けさに笑ってしまう。
やがて男は一日がかりで何とか売り歩き、主人のもとへ戻る。
サゲ
代表的な型では、
主人が「ちゃんと売れたのか?」と聞くと、男は得意そうに「はい。かぼちゃは全部なくなりました」と答える。
ところが売上を調べると、
ほとんど儲けになっていないどころか損をしている。
本人だけは「商売はうまくいきました」と満足しているところで終わります。
※演者によって売り方やサゲには違いがあります。
得意とした噺家
桂米朝
→ 上方版の代表的な演じ手。人物描写が細やか。
桂枝雀
→ 間抜けな主人公を愛嬌たっぷりに演じた名演で知られる。
桂ざこば
→ テンポの良い上方らしい演出。
笑福亭松鶴 (6代目)
→ 人情味のある語り口で人気を集めた。
噺の魅力
① 愛すべき間抜け者
主人公は決して怠け者ではなく、言われたことを一生懸命やっているだけ。
その素直さが笑いにつながります。
② 商売の難しさ
- 値段の付け方
- 客とのやり取り
- お金の計算
など、当たり前の商売の難しさがコミカルに描かれます。
③ 上方落語らしい明るさ
登場人物に悪人はほとんどおらず、主人公の失敗を温かく見守る雰囲気があります。
笑いながら楽しめる、上方らしい滑稽噺です。
成立
上方落語の古典演目として古くから伝えられています。
作者は不明ですが、江戸時代後期から明治期には現在に近い形で演じられていたと考えられています。
上演の特徴
20〜30分程度の中編。
主人公の間抜けさを大げさに演じるほど笑いが大きくなる一方で、やり過ぎると単なる愚か者になってしまうため、憎めない人物像を作ることが重要です。
落語ファンが特に好きな場面
客との値段交渉
客に言いくるめられて、どんどん値段を下げてしまう場面。
主人公の人の良さがよく表れます。
商売にならないやり取り
客に褒められると調子に乗ったり、勧められるままに損をしてしまったりする場面は、この噺の大きな笑いどころです。
類似する演目
- 「牛ほめ」→ 言われたとおりにやって失敗する滑稽噺。
- 「子ほめ」→ 教わったことを丸暗記して失敗する。
- 「道具屋」→ 商売を題材にした滑稽噺。
- 「粗忽長屋」→ 愛すべき間抜け者が主人公の代表作。
一言でいうと
「商売の才能がまったくない男が、真面目にかぼちゃを売って大騒動になる話」
※補足
この噺は演者による改作や省略が比較的多く、主人公の名前や細かなやり取り、サゲにはいくつかの型があります。特に上方では、主人公の天然ぶりをどこまで誇張するかによって、高座の雰囲気が大きく変わります。
演目名の変遷
もともとは上方落語の「みかん屋(蜜柑屋・蜜柑売り)」という演目でした。
これを五代目柳家小さんが東京へ移入する際、売り物を「かぼちゃ」に変更するなどの改作を行い、「かぼちゃ屋」として広まりました。
古い資料には
- みかん屋
- 蜜柑屋
- 蜜柑売り
- 南瓜屋
- 唐茄子屋
など複数の題名が見られます。