座布団げーし!

演目/猫の皿

「猫の皿(ねこのさら)」とは

古典落語の滑稽噺(こっけいばなし)の代表作で、骨董・目利き・欲の張り合いを題材にした一席です。

旅人が茶店で見つけた、何の変哲もないように見える古い皿。

実はその皿には高い価値がある。

それに気づいた骨董好きの男が、何とか安く手に入れようとするのですが、茶店の主人も一筋縄ではいきません。

「相手を騙そうとしたら、実は相手のほうが一枚上手だった」という、落語らしい逆転が魅力の噺です。

あらすじ(全体)

ある旅人が街道を歩いている。

道端の茶店で一休みすることにする。

店先には一匹の猫がいる。

その猫が、店で使われている古い皿で餌を食べている。

旅人はその皿を見ると、「これは……」と驚く。

どうやらその皿は、古い名品らしい。

皿の価値に気づく

旅人は骨董について知識がある。

その皿をよく見ると、「これは相当な値打ち物だ」と分かる。

ところが、茶店の主人は皿の価値に気づいていないように見える。

旅人は、「これは掘り出し物だ」と考える。

しかし、「その皿を売ってくれ」と正直に言えば、高い値段をつけられてしまう。

そこで旅人は一計を案じる。

猫を利用する

旅人は何気ない顔で、「この猫、ずいぶんいい猫だね」などと話しかける。

そして、「この猫を譲ってくれないか」と持ちかける。

主人が値段を聞くと、「五両でどうだ」などと、かなり高い値段を提示する。

主人は驚く。

「そんなにするのか?」

旅人は、「この猫は珍しい猫だからね」ともっともらしく説明する。

猫と皿を一緒に

旅人の本当の目的は猫ではない。

猫が使っている皿である。

そこで、「じゃあ、その猫が使っている皿も一緒にくれないか」と話を持ちかける。

すると主人は、「皿なら別にいいが……」と答える。

旅人は、「それなら猫と皿を一緒に……」と交渉を進めようとする。

ところが――。

主人のほうが一枚上手

主人は、旅人の様子を見ているうちに、「どうも、この皿を欲しがっているらしい」と気づく。

そこで、「猫は五両で売る」と言う。

旅人は、「では、その皿も……」と期待する。

すると主人は、「ああ、その皿は売らないよ」と言う。

旅人は慌てる。

「なぜだ?」

主人は平然と、「その皿で猫を売るんだ」という。

つまり主人は、皿の価値を知らないどころか、皿を餌にして猫を高く売るという商売をしていたのである。

サゲ

代表的なサゲは、

旅人が、「この皿も一緒に売ってくれ」と頼むと、主人が、「いや、この皿は売れない。これで猫を何匹も売っているんだから」というもの。

つまり、皿そのものを売るより、皿を使って猫を高く売ったほうが儲かる

旅人が欲しがっていた皿の価値を、主人は最初から知っていた。

騙そうとした骨董屋が、逆に騙されるという見事な逆転です。

噺の魅力

① 骨董の「目利き」

旅人は、「この皿には価値がある」と見抜きます。

しかし、価値を知っているからこそ、「安く手に入れたい」という欲が出る。

その欲が、逆に利用されてしまいます。

② 猫をダシにする発想

「皿が欲しい」と直接言わず、「猫を買う」という遠回りをする。

ところが、その作戦を主人に見破られる。

この騙し合いが噺の中心です。

③ 最後の逆転

旅人は、「自分は目利きだから、主人より一枚上だ」と思っている。

ところが実際には、主人のほうが商売上手だった

この立場の逆転が、非常にきれいなサゲになっています。

「猫の皿」の皿

この噺の面白さは、「価値を知っている人」と「価値を知らないように見える人」の逆転にあります。

旅人は皿の価値を知っています。

主人は知らないように振る舞う。

しかし実際には主人も皿の価値を理解していて、「猫を売るための道具」として利用していた。

つまり、「目利きだから勝てる」とは限らないという話になっています。

成立

江戸落語として伝わる古典落語です。

骨董を題材にした噺ですが、成立時期や作者については明確ではありません。

江戸時代の街道沿いの茶店や、骨董を売買する商人の姿を背景にした噺と考えられています。

上演の特徴

15〜20分程度の短めの滑稽噺。

登場人物は主に、

  • 旅人
  • 茶店の主人

というシンプルな構成です。

猫そのものはもちろん実際には出てきません。

噺家が、猫が皿から餌を食べている様子を仕草だけで表現します。

得意とした噺家

古今亭志ん生

→ 飄々とした語り口で、欲の張り合いを軽妙に演じます。

古今亭志ん朝

→ 骨董好きの男の心理と、主人の商売人らしさをテンポよく描きます。

柳家小三治

→ 主人のとぼけた人物像を自然に演じ、最後の逆転を際立たせます。

落語ファンが特に好きな場面

猫が皿で餌を食べている

何気ない光景から、「これは名品だ」という展開につながる。

噺のすべての発端になる場面です。

旅人の作戦

「皿が欲しい」とは言わず、「この猫を買いたい」と話を持ちかける。

骨董品を安く買おうとする欲が見えてくるところです。

「皿は売らない」

最後に主人から、「皿は売らない」と言われる。

旅人は、「なぜだ?」と驚く。

そこで、「この皿で猫を売っている」と明かされる。

ここが最大の笑いどころです。

類似する演目

  • 「壺算」→ 商売・値段・計算をめぐる騙し合い。
  • 「道具屋」→ 骨董や道具をめぐる滑稽噺。
  • 「時そば」→ 相手の隙を利用して得をしようとする噺。
  • 「権助魚」→ 欲や嘘が次々と裏目に出る滑稽噺。

一言でいうと

「高価な皿を安く手に入れようとした目利きが、皿を使って猫を高く売る茶店の主人に一本取られる噺」です。