座布団げーし!

演目/青菜

「青菜(あおな)」とは

古典落語の滑稽噺(こっけいばなし)の代表作で、言葉の取り違え・知ったかぶりを題材にした一席です。

植木屋の職人が、仕事先の旦那から酒と料理をごちそうになる。

その席で交わされた粋なやり取りをすっかり気に入り、自分の家でも再現しようとするが、肝心の言葉を間違えてしまう。

知ったかぶりがどんどん話を大きくしていくという、落語らしい言葉遊びが魅力の噺です。

あらすじ(全体)

暑い夏の日。

植木屋がある大きな屋敷で仕事をしている。

仕事の休憩中、旦那が植木屋に声をかけ、「暑いから一杯やっていけ」と酒を勧める。

植木屋は喜んでごちそうになる。

旦那は料理を出し、植木屋はその中にある青菜を食べようとする。

ところが旦那が女中に、「青菜はどうした?」と尋ねる。

女中が、「鞍馬から牛若丸が出ましてございます」と答える。

旦那は、「よしよし」と言う。

植木屋には、このやり取りの意味が分からない。

しかし、旦那の粋な言葉遣いに感心する。

実は、「青菜はどうした?」という問いに対して、「もう食べてしまってありません」と直接言うのではなく、「鞍馬から牛若丸が出ました」という雅な隠し言葉を使ったのである。

植木屋は、「これは粋な旦那だ」とすっかり感心してしまう。

植木屋の知ったかぶり

植木屋は家に帰ると、女房にその話をする。

そして、「俺もああいう粋なことを言ってみたい」と考える。

そこで女房に、「お客さんが来たら、あの旦那のように言葉を使おう」と教える。

ところが植木屋は、肝心の言葉を正確には覚えていない。

それでも、「分かった、俺に任せておけ」と自信満々。

そこへ近所の客がやって来る。

植木屋は旦那の真似をしようとして、わざと気取った言葉を使い始める。

しかし、覚えている言葉が間違っているため、会話がどんどんおかしくなっていく。

青菜のやり取り

植木屋は妻に、「青菜はどうした?」と尋ねる。

妻は、「そんなもの、とっくに食べちゃいましたよ」と普通に答える。

植木屋は、「そこは旦那のところと同じように言え」と怒る。

しかし妻も旦那の言葉を知らない。

そこで植木屋が、「鞍馬から牛若丸が……」と言おうとする。

ところが、妻が横から適当に合わせてしまい、

二人とも何を言っているのか分からなくなる。

粋な旦那の真似をしたつもりが、夫婦そろって意味不明な会話になってしまう。

サゲ

代表的なサゲでは、植木屋夫婦が旦那の真似をしているところへ、家の外から声がかかる。

そこで植木屋が、「誰だ?」と尋ねる。

相手が何か気の利いた言葉を返すと、植木屋は得意になって、「うちには青菜なんぞない!」というような調子で応じる。

最後まで旦那の粋な言葉を理解できないまま、形だけを真似していることが笑いになります。

※サゲや細かなやり取りには演者による違いがあります。

得意とした噺家

三代目桂米朝

→ 上方落語の代表的な演者。旦那と植木屋の身分差、言葉遣いの違いを鮮やかに描きます。

五代目柳家小さん

→ 江戸落語らしい素朴な植木屋像で、この噺を十八番の一つとしました。

古今亭志ん朝

→ 植木屋の調子の良さと、旦那の粋な雰囲気を対照的に演じます。

桂枝雀

→ 植木屋夫婦の勘違いを大きく膨らませ、ナンセンスな笑いを強調した演出で知られます。

噺の魅力

① 「粋」の意味を分からず真似する

植木屋は旦那の言葉の意味を完全には理解していません。

それでも、「これは粋だ」と思ってそのまま真似してしまう。

この「分かったつもり」が噺の笑いの中心です。

② 「鞍馬から牛若丸」

この噺を代表する有名な言葉です。

「青菜がなくなった」という日常的な事実を、古典的な言葉に置き換える。

意味を知っていれば洒落た表現ですが、植木屋が真似すると途端に滑稽になります。

③ 身分の違い

旦那は教養のある粋な人物。

植木屋は職人気質で、気のいい庶民。

二人の会話の違いが、この噺の面白さを生んでいます。

④ 夫婦の掛け合い

後半は旦那と植木屋の関係から、植木屋と女房の夫婦漫才のような展開になります。

旦那の真似をしようとして夫婦ともども混乱するところが大きな聴きどころです。

「鞍馬から牛若丸」の意味

旦那の家では、「青菜はどうした?」と聞かれた女中が、「鞍馬から牛若丸が出ましてございます」と答えます。

これは、「青菜を食べてしまったので、もうない」という意味。

青菜を「菜」と見立て、そこから「名」を連想し、「名がない」→「菜がない」という言葉遊びになっています。

そして「鞍馬」と「牛若丸」を組み合わせることで、青菜がなくなったことを直接言わずに表現しています。

成立

上方落語の古典として伝わってきた噺で、江戸にも移入されています。

上方では三代目桂米朝、東京では五代目柳家小さんなどによって広く演じられ、現在では東西の落語家が演じる代表的な滑稽噺となっています。

上演の特徴

15〜30分程度の中編。

前半の旦那の粋な会話と、後半の植木屋夫婦の滑稽なやり取りとの対比が重要です。

特に、「粋な旦那」と「粋を真似したい植木屋」の演じ分けによって、噺の面白さが大きく変わります。

落語ファンが特に好きな場面

旦那の屋敷での酒宴

植木屋が旦那の言葉遣いに感心していく場面。

植木屋が「俺もこういうことを言ってみたい」と思うきっかけになります。

「鞍馬から牛若丸」

この噺最大の名場面。

旦那にとっては何気ない洒落ですが、植木屋にとっては驚くほど粋な言葉。

この温度差が笑いになります。

植木屋夫婦の真似事

後半の最大の笑いどころ。

植木屋は旦那の真似をしたい。

女房は何を言っているのか分からない。

それでも二人で無理やり粋な会話を成立させようとするところが面白いところです。

類似する演目

  • 「つる」→ 知ったかぶりから話がどんどんおかしくなる。
  • 「道灌」→ 教わった言葉を間違って使う滑稽噺。
  • 「子ほめ」→ 教えられた言葉をそのまま使おうとして失敗する。
  • 「やかん」→ 知ったかぶりと屁理屈を楽しむ噺。

一言でいうと

「旦那の粋な言葉を真似した植木屋が、知ったかぶりで夫婦そろって大混乱する噺」です。